2025.03.24 おすすめ記事

貿易手続とは?その問題点と現在の取組みについて

tradigi.jpは、「貿易(trade)」と「デジタル(digital)」をキーワードに、「デジタルネイティブな貿易プロセス」の実現を目指して始動したポータルサイトです。デジタルネイティブな貿易プロセスとは、「貿易手続を、デジタル技術前提の設計へと根本的に刷新すること」です。それをどうすれば実現できるのか、少しずつ探っていきたいと思います。

初回は、ウォーミングアップとして(1)「貿易」とは何か(2)貿易手続はどんなものでどんな問題があるのか(3)今どのような取組みが進んでいるのか、について紹介します。

貿易とは?

貿易活動は、人類の歴史とほぼ同義と言えるほど古く、初期の人類は物々交換を通じて、不足する資源や食料を得ていました。シルクロードのような歴史的な交易路は、文化交流とともに経済発展を促してきた証です。日本においても、古代から遣唐使による交易に始まり、江戸時代の鎖国体制下においても部分的な貿易が続けられ、経済発展と文化の進歩に大きく貢献してきました。

近現代においては、輸出入を基軸とした経済成長戦略が採られ、日本経済の成長を支えてきました。特に戦後、高度経済成長期には輸出主導型の経済モデルが日本の発展を牽引しました。現在も、グローバルサプライチェーンの一翼を担う存在として、貿易は日本の経済基盤に不可欠な要素となっています。

貿易手続の長い歴史と紙の呪縛

さて、貿易手続は「国境を越えて複数の関係者が相互に取引を行うこと」です。売り手と買い手が対面できず物理的に離れた状況において、関係者間でスムーズな取引を進めるためのルールがいろいろと定められてきました。むしろ、定められすぎて非常に複雑になっています。

また、貿易の歴史はコンピュータやデジタルデータ普及の歴史よりもはるかに長いため、いまでもコンピュータ化・デジタル化されていない手続き・業務が存在しています。貿易手続の歴史は、書類(抽象的にいえば「貿易手続ごとにまとめられた情報の集まり」)による情報伝達の歴史とも言えるでしょう。

船荷証券、インボイス、原産地証明書をはじめとして、膨大な書類が貿易取引に使われています。これらは、契約の証拠、貨物の追跡、通関手続、決済といった貿易手続の各段階で必要不可欠なものです。コンピュータの普及以降はデジタルデータの活用が一部行われているものの、有価証券のような譲渡性を持つ文書をデジタル化することのハードルは高く、また、単に書類をデジタル化しただけでは「書類に最適化されたプロセス」は変わりません。

というわけで、物理的な書類を中心とした情報伝達手法は長きにわたって貿易プロセスを支配してきました。この手法は長年の慣習と信頼関係の上に成り立っており、その汎用性や安定性は否定できません。しかしながら、書類ベースの貿易プロセスには、他の分野と同様の問題が存在します。例えば、その処理に(人手含む)時間と労力が必要になること、手作業によるヒューマンエラーを排除できないこと、移動する場合のコストがかかること、追跡性とトレーサビリティが弱いこと、情報セキュリティが脆弱であることといった問題です。

デジタル化への取組み

こういった問題を解決するため、近年「貿易デジタル化」をテーマとした取組みが始まっています。日本において経済産業省が策定した「貿易手続デジタル化に向けたアクションプラン」はその一例です。具体的には「電子船荷証券の法制度整備」「港湾手続や原産地証明書のデジタル化推進」「貿易プラットフォーム(貿易関連手続をデジタル化して業務効率化・透明性向上を目指すデジタルソリューション)活用のための補助事業」などが含まれています。

お役所特有の霞が関文学的表現による長い文書と、文字とポンチ絵をこれでもかと配置したプレゼンテーション資料で構成されており、決して読みやすいものではありません。ただ、それを我慢して読み進めると、近い将来を見据えて日本の貿易をデジタル的に進化させるための羅針盤として良く作りこまれたプランだと感じます。

今回はここまでです。次回から、このアクションプランの内容について深堀を行っていく予定です。