2025.04.01 貿易PF補助事業

スマートEPA!EPA原産性調査プラットフォームJAFTAS®×第一種特定原産地証明書発給システム(日本商工会議所)システム連携プロジェクト(東京共同会計事務所様)

ウェビナー発表資料ダウンロード:r6-webiner資料_東京共同会計事務所様

※この記事は、月刊JASTPRO 2024年8月号(第543号)の記事を再掲載したものです。

今回は「スマートEPA」をテーマに、原産性調査プラットフォームJAFTASと日本商工会議所様の発給システムの連携プロジェクトについてご紹介いたします。

東京共同会計事務所は、国際税務のプラクティスの1つとしてEPA/FTAを活用した関税削減のご支援を実施させて頂いております。経済産業省委託事業として「EPA相談デスク」を10年間実施しており、東京共同トレード・コンプライアンスという会社でFTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)活用ソリューションとして、今回ご紹介するEPA原産性調査システムであるJAFTASと併せてEPAに関するコンサルティング業務を幅広く提供しております。

JAFTASは、自動車業界のEPA原産性調査の課題を解決するためにサプライチェーン全体でEPA原産性調査を行うことを目的に開発された「EPA原産性調査プラットフォーム」です。自動車業界の大手企業と一緒に立ち上げたシステムで、サプライヤー企業を含めると現在1900社以上にご登録いただいています。今回の貿易PF補助金事業として日商連携機能の開発をスタートしましたが、自動車・自動車部品メーカーの意向として日商発給システムとの連携機能の開発は企画段階からご提示を受けており、漸くこの7月からスタートできるという念願の機能です。JAFTASで原産資格調査を行うと原産資格を立証するための根拠資料が自動で作成され、日本商工会議所への判定依頼時の提出資料となり、輸入国税関からの検認(事後調査のようなもの)に対するサポートも我々会計事務所のEPA専門家メンバーで対応するというトータルソリューションです。

EPAは経済連携協定(Economic Partnership Agreement)の略で、本日の説明では、関税を削減・撤廃できる協定とご理解ください。具体例では、食品から自動車までEPA締約国に輸出される際、輸入国税関では、本来通常の関税率がかかるところ、EPAを活用するとゼロまで下がるケースがあります。EPAは新聞報道等で皆様もよく目にされていると思いますので詳細説明は割愛しますが、現在日本が締結・発行しているEPAは20協定あります。日本の輸出総額は2022年は約百兆円程度で、80%超のEPAカバー率があると言われております。昨今では2022年1月よりRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership:地域的な包括的経済連携)が締結され、の日本の輸出相手国上位3位以内に入る中国と韓国(2022年度輸出総額1位中国、2位アメリカ、3位韓国 出典:財務省貿易統計)を含む貿易経済圏が経済連携協定を使って確立されていることになります。ただ、EPA締結によって自動的に関税がゼロになると思われる方が多いのですが、実はそうではなくEPAを活用するには原産地証明という手続が必要になります。第三者証明制度では、指定発給機関である日本商工会議所様への申請手続きが必要で、その申請書類を作成するシステムがJAFTASです。日本商工会議所へ申請し、承認された輸出産品に対して原産証明書が発給され、輸入国の税関に提出すると関税がゼロになる、そう捉えていただければと思います。

今回の補助金活用のテーマは、官民連携プラットフォームの実現です。これまでJAFTASで原産性調査を実施し、その後日本商工会社様の発給システムにログインして判定依頼を行うという形でしたが、連携機能の開発後はJAFTASにてワンストップで完結できるようになりました。補助事業を実施する上で難しかった点は、フジトランス様と同じく、限定された期間でのプロジェクト運営が非常に困難だったことです。必要な仕様の検討は自動車・自動車部品メーカーのご協力を受けて実施しました。補助金交付決定後、一気に開発着手し、開発ベンダーには非常に短いスケジュールできちんと仕上げていただきました。その後パイロット運用を開始し、7月1日から本番利用開始というスケジュールで進めることができました。関係者各位に本当に改めて御礼申し上げたいと思います。工夫した点として、多くの方にご利用いただくため広報・周知ウェビナーを行いました。510社815名の方々にご参加いただき、関心度・期待値ともに非常に高い状況と思っています。パイロットユーザーであるデンソー様から日商連携機能の効果についての事例もご紹介いただきました。業務の方々が不便に感じている部分に対し、かゆいところに手が届くような機能開発ができたと感じています。

続いて補助事業の効果をご説明したいと思います。補助事業で改善された業務プロセスとして、原産資格調査は大きく「原産資格調査」と「証明書の発行」という手続がありますが、JAFTASの日商連携機能は前者の「原産資格調査」の部分です。この手続に関して官民ともに工数負担の課題がありました。法人税申告に例えてみると、多くの企業で会計ソフトや税務申告ソフトを利用していると認識しております。国税庁もe-Taxをどんどんパワーアップしているイメージがあり、紙は卒業、今やデジタルが当たり前という世界を目指していらっしゃるのかなというふうに見ております。一方、EPA原産証明書の場合どうかというと、まだまだです。表計算ソフトやワープロソフトを駆使し、印刷・押印・提出が行われている状況かと思います。そういう資料が日商判定事務所に届くと、記載ミスや書類漏れ、フォーマット不統一などによって審査時間がかかる課題があると伺っておりました。

この観点から、JAFTASに標準フォームを搭載し、協定やHSコード情報をデータベース化、ワークフローに沿って判定書類作成後、そのまま日商に自動連携できます。今まではJAFTASと日商発給システムで31箇所もの転記がありましたが、API連携によって転記なし、ボタン操作のみで判定依頼ができるようになりました。原産資格調査には平均して30日くらいの工数がかかっていたというデータがあり、そのうち30日間のうち9日間は止まっているという試算もありました。ここが自動連携することで、トータルで3割程度のリードタイム削減ができると試算しており、こういった効果をどんどん企業の皆様に届けられれば良いと考えています。

最後に、この事業を通じて感じたことをお伝えしたいと思います。自動車業界の皆様と一緒に作ってきての感想と捉えていただきたいのですが、ボトムアップアプローチのDXが物流の世界へ変革を起こすという点です。部品メーカー担当者の困りごと、工数負担を自動車業界全体の困りことと捉えて進めてきたプロジェクトがJAFTASです。一部署で起きた変革が企業組織全体に浸透して、その企業活動が産業界に普及して新しいスタンダードが生まれてくることを日々感じながら仕事させていただいております。我々は貿易PFという位置づけからするとすごく小さな部分だと思いますが、非常に重要な原産地証明のプロセスを皆様と一緒に活動させていただいて「モノの流れを手続で止めない」サービスプロバイダーでありたいと思っております。ご清聴ありがとうございました。