2025年11月24日~27日の4日間、ダカール(セネガル)にて第44回国連CEFACTフォーラムが開催されました。このフォーラムは、国連CEFACTに関与する国際機関や企業、専門家が集まり活動成果の発表や情報交換が行われるイベントです。今回は、オンライン参加したJASTPRO職員・アドバイザーの他、現地参加した専門家からの報告を元に3つの記事にまとめてお届けします。
この記事では、報告その1、報告その2で触れたテーマ以外にフォーラムで開催されたセッションについて、テーマごとにダイジェストで紹介します。
シングルウィンドウ(※)
※シングルウィンドウとは、手続等に係る窓口を一元化する仕組みのこと。日本ではNACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System=輸出入・港湾関連情報処理システム)が貿易手続におけるシングルウィンドウの役割を果たしている。
国連CEFACT内に設置されたシングルウィンドウ・ドメイン(活動領域)において、要点整理と今後のプロジェクト提案が行われた。これまで発出されたシングルウィンドウに関する国連CEFACT勧告は以下の通り。
- 第33号 シングルウィンドウ構築のためのガイドライン
- 第34号 国際貿易のためのデータの簡易化と標準化
- 第35号 国際貿易シングルウィンドウに係る法的枠組みの構築
- 第36号 シングルウィンドウの相互運用性
- 第37号 シングル入力ポータル (Single Submission Portal)
- 第38号 貿易情報ポータル (Trade Information Portal :TIP)
同ドメインにおいては、国際的プラットフォームの技術的進歩といった状況の変化に鑑み、シングルウィンドウの相互運用性に関する勧告36号をリニューアルすることが決定された。
勧告36号が提言するシングルウィンドウの相互運用性は、「利用者側の追加的作業を必要とせずに、二つ以上のシステムやコンポーネントが国境を越えて情報を交換し活用できる機能」と定義されている。相互運用性に影響を与えるのは、ビジネス上のニーズ、情報の個々のアイテムが持つべき意味、ガバナンス、法制としているが、データトラストフレームワークやデジタルIDが進捗を見せる現況においては、法制面の取扱いも含めて、より多くの要素を踏まえたものにする必要がある。
そこで、勧告36号の改定においては、データ交換に主眼をおいてシングルウィンドウの相互運用性確立のためのガバナンスと政策の枠組みを提言することを目的として、1)法制面、組織面、プロセスについて相互関係も含め調整、2)既存の標準(eCert, eCITES, WCOデータモデル等)の参照、3)関連政策と国境を越えるデータ交換の枠組みの3点を改定範囲とすることを決定した。
トレードファイナンス
トレードファイナンスプロジェクトの担当者から、貿易金融参照データモデル(Trade Finance Reference Data Model:TFFRDM)が紹介された。このデータモデルでは、金融関連の情報項目について、売買関連情報であるサプライチェーンマネジメント参照データモデル(SCRDM)と運輸物流関連情報である複合一貫輸送参照データモデル(MMTRDM)の情報項目も使用している。そのため、国連CEFACT参照モデルのXMLスキーマモジュールをどのように組み込んで公開すべきかが議論になった。当件につき、プロジェクト担当者からメッセージ構築法に則った金融メッセージの定義表が提出され、これを基に貿易金融プロジェクトチームにて検討することとなった。
その他、金融関係の国際標準であるISO 20022が国連CEFACT規格に与える影響について発表が行われた。ISO20022は決済および金融データメッセージ内で交換されるデータの質と量を向上させるものである。主要通貨すべてをカバーする決済システムがISO 20022を採用し、すべての決済がSWIFT標準からISO 20022に移行することにより、決済データの品質、金融データの自動化、エンドツーエンドのSTL(ストレート・スルー・トランザクション)処理、そして財務報告および規制報告の改善につながることが期待されている。ISO20022の採用により、商流関連では信頼性のある電子インボイスの発行/参照が可能になり、信頼に裏付けられたインボイスファイナンスが可能になるとともに、信用状や為替手形、約束手形プロセスのデジタル化が可能になる。これにより、会計システムや税務システムとの連動が容易になる。なお、SWIFTでは送金決済領域でISO20022は導入済だが、信用状決済領域では使用されていない。
ブロックチェーンの活用事例紹介
国連による開発プロジェクト「貿易円滑化と競争力のためのブロックチェーン」の主要な知見と成果について、特に開発途上国における貿易手続きの合理化、透明性の向上、取引コストの削減といったブロックチェーンの導入調査および実証実験について事例紹介が行われた。
まず、国連貿易開発会議(United Nations Conference on Trade and Development:UNCTAD)がプロジェクトの一環として整備したブロックチェーン振興の支援メニューとして「研修コース」「ガイド」「チェックリスト」などの紹介が行われた。これらは、責任者や実務者がブロックチェーンのメリット、条件、環境を理解できるようにすることで、失敗のないブロックチェーン導入を可能にすることを目指すものである。
続いて、国連アジア太平洋経済社会委員会 (UNESCAP)がモンゴルで実施した「通関」「原産地証明」「トレーサビリティ」「貿易回廊」「貿易金融」へのブロックチェーンの適用実験が紹介された。これは主要な利害関係者のニーズと優先順位を整理・評価することで、ブロックチェーンが貿易円滑化にどれほど役に立つか、そのギャップ分析と可能性の評価を行ったものである。
その他、ラテンアメリカ地域での調査やトレーサビリティ実証、及び国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)のブロックチェーン調査/実証の活動が報告された。アフリカ地域では、ケニヤの原産地証明及びモロッコにおける港湾システムについての研修などが紹介され、中央アジア地域ではキルギスのブロックチェーンによる貿易手続円滑化、及びウズベキスタンの動植物検疫証明書のパイロットプロジェクトが紹介された。
国連透明性プロトコル(UNTP)
国連透明性プロトコル(UNTP)について、仕組みの概要と導入の最新情報が紹介された。世界的なバリューチェーンにおける持続可能性とレジリエンス(回復力)への懸念が高まっており、多くの先進国で新たな規制が導入され、貿易障壁の一つとなっている。大手ブランドには気候関連情報開示等のESG関連の年次規制報告も求められている。そういった規制の遵守義務と市場の期待をいずれも満たすには、バリューチェーンにおけるトレーサビリティと透明性を大規模かつ低コストで実現することが不可欠であり、UNTPはそのためのツールとなることが期待されている。
UNTPは、どの業界でも必要とする共通データのための拡張可能なプロトコルである。なお、EU DPPは市場進出時点で製品に適用されるものであり、その作成を支援するために上流データを提供するのがUNTP DPPである。従って、EU DPPとUNTP DPPは互いに補完的な関係であると考えることができる。UNTPウェブサイトにおける実装ページは2026年の早い時期に完成する見込みとなっている。現時点でUNTPにコミットしているのは業界団体が多い。これは、企業ごとに個別にアクセスするより、業界の声をまとめて伝える組織との討議の方が効率的だからである。
繊維分野で進められているプロジェクトの現状共有も行われた。主な課題は1)相互運用性や関連ソリューションへの認識不足、2)トレーサビリティや相互運用性そのものと、解決策が多岐にわたることによる混乱、3)相互運用性に取り組むキャパシティやリソースの制限、4)キャパシティを持っても利便性を理由に相互運用性を犠牲にして独自解決策の構築を求める傾向、などである。こういった課題に対処するため、業界ネットワークを代表する組織との連携が進められている。なお、ユーザーニーズとソリューション設計の間に横たわるギャップも、もう一つの大きな課題であることが共有された。
製品の品質管理、品質保証の便宜のための追跡システムは数多く存在しているが、それらは個別の仕様で実装されている。これらを技術的に統一し、まとめ上げることは現実的ではない。そこで、UNTPはこういった現実に適用しうるために「プラットフォームではなくプロトコル」という考え方のもとに開発されている。つまり「どのような技術実装によるプラットフォーム/ソリューションであっても、それがUNTPというプロトコルに準拠し、相互運用可能であれば良い」という点が改めて強調された。