2026.07.08 おすすめ記事

国連LOCODEのトリセツ その1「定義と、これまでの変遷をまとめてみました」~CEFACT標準ことはじめ(4)

この「CEFACT標準ことはじめ」では、これまでCEFACT標準の中核的存在である「コアコンポーネントライブラリ(CCL)」と「コアコンポーネント技術仕様(CCTS)」について、理想と現実や、前提知識が求められている観点からの難しさ、抽象的であることを乗り越えるための思考整理を紹介してきました。今回からは、CEFACT標準の中でも目に見えやすく業界によっては身近な存在である「国連LOCODE」を取り上げます。今回はまず「その1」として国連LOCODEとは何か、その歴史や発展・変遷の経緯について解説していきます。

まず、国連LOCODEって何?

国連LOCODEは、正式名称を「国連貿易および輸送場所コード(United Nations Code for Trade and Transport Locations)」と言い、国連CEFACTによって管理・メンテナンスが行われているコード体系です。

最新の定義では、貿易等に関する貨物の移動のために使用される海港、空港、内陸通関デポ、内陸貨物ターミナル及び貨物の受渡場所などの機能(Function)項目を持つ「地名」に付与されるもので、ISO3166-1の国コード2桁と3桁の英数字の5桁で構成されています(注釈:詳細については「国連ECE勧告第16号(最新版: Revision4 2020 Edition:ECE/TRADE/459)」が公開されており、この記事でも過去バージョンを含む同勧告について都度触れていきます。また、この定義は当初と大きく変わっており、昔からLOCODEを使っている人ほど混乱されるケースが多かったりします。このあたりも後述します)。

さらに、国連LOCODEとして登録できる地名は「行政区域または経済区域」、つまり市・町・区のレベルに限られます。この特徴こそが、国連LOCODEの全体的な構成や変遷の歴史における重要な要素となっているため、これから詳しく説明していきます。

ここでは、まずとても重要な点として「国連LOCODEは地名に付与されるコードであり、施設等に付与されるものではない」ということをご理解いただければと思います。

国連LOCODEが生まれるまでの、貿易業界における課題とは

さて、1996年発出の勧告第16号第2版によると、国連LOCODEが誕生するまでは貿易・輸送実務に求められる「貨物の所在確認」に課題を抱えていました。

その原因は、まず所在地の地名表記に揺れがあったことです。例えば、ある住所について言語が異なれば異なる綴り、名称となる場合があります。これが情報交換の混乱を招いていました。

次に、貿易業界専用のコードシステムが欠如していたことです。当時、既に場所を示すためのコードはいくつか存在していたようですが、それらはほぼ各国毎の郵便事業のための仕組みであり、国境を越える貿易に適用するには不十分なものでした。したがって、貿易業界向けの国際的に使えるコード体系の必要性が生まれたというわけです。

進化・変化する規格としての国連LOCODE

その後、国連CEFACTの前身である「貿易手続簡易化作業部会」において、専門家により税関の管理対象となる貨物、つまり国際貿易に当てはまる貨物が通るすべての場所を網羅した包括的なコードの必要性を検討し、作業計画に取り入れました。

他の地域組織や国際機関との協議を経て、1977年には行動計画案を作業部会に提出され、その後1980年に国連LOCODEをテーマとした勧告16号の初版が発出されました。それから46年。国連LOCODEは貿易・国際物流・サプライチェーンを取り巻く環境の変化に対応して、その位置づけや構成、さらには定義までがアップデートされ、現在も世界中で使われています。

ただ、一度決められたものが大きく変わると、混乱を招くこともあります。実際、日本においては(日本のフォーカルポイントであるJASTPROの広報不足も原因の一つですが)国連LOCODEに対する理解に差が生じてしまい、その結果使われ方に混乱が発生しているケースも見受けられます。

こういった混乱を解消するための第一歩として、ここで一度国連LOCODEがたどった変遷について、過去のバージョンとの比較を通してまとめてみたいと思います。

バージョン比較の情報源は第2版・第3版・第4版

この勧告は随時アップデートが行われ、1995年に第2版、1998年に第3版がリリースされました。2020年に発出された第4版が現時点での最新版ですが、細かいアップデートや修正はセクレタリーノート(Secretariat Note)として公開されています。残念ながら初版は国連CEFACTウェブサイトに掲載されていないため、今回の比較は第2版(1996年)、第3版(1998年)、第4版(2020年版)で行っています。

変遷ポイント(1) 位置づけ

先に紹介した通り、国を越えて取引を行う貿易には地名表記の揺れによる課題がありました。これを解消するためのコードとして生まれた国連LOCODEは、第2版と第3版においては「貨物の移動を円滑に進めることをサポートする、国際貿易や輸送における情報交換のためのコードシステム」と位置付けられていました。

その後、技術進化に伴う貿易手続電子化の発展により、情報システムにおける互換性、相互運用性の欠如からデータ形式の不一致といった新しい課題が出てきました。正式名称に「電子ビジネス」が含まれているとおり、国連CEFACTは電子ビジネスの促進が使命の一つであり、この課題への対処として、EDIFACTやコアコンポーネントライブラリといった電子データに関する標準を開発してきました。国連LOCODEもこれに合わせるように発展を続けており、第4版の勧告では「セマンティック標準を確立し、電子メッセージ交換を支援するもの」という記述が追加されました。これにより、国連LOCODEは地理的位置を識別するためのコードとして、電子的な情報交換の共通言語という位置づけになっています。

変遷ポイント(2) 定義

現在の定義では、国連LOCODEは「国際貿易や輸送に関連する行政区域または経済区域に付与する5文字のコード」ですが、この定義は当初から大きく変わったものです。

一番の変更点は、国連LOCODEが付与される対象です。第2版、第3版において、国連LOCODEが付与されるのは「施設」でした。より詳しくいうと「継続的に用いられる恒久的(permanent)な施設」です。つまり、この時点で国連LOCODEには「港」や「空港」といった恒久的施設が多数登録されることになりました。

しかしながら、第4版において定義が大きく変わり「行政区域または経済区域」と定められることになりました。

そのため、現在の国連LOCODEには「かつて施設として登録されたもの」と「行政区域または経済区域として登録されたもの」が混在しているということになります。2020年の正式な第4版のリリースより前からこの変更に基づいた登録を進めるケースもあったようですが、この新しい定義だけに沿ったコード体系として完成するにはまだ当分時間がかかるものと考えられます。

他にも、それまで国連LOCODEが担っていた「施設の特定」をどのように行えばよいのか、という疑問も出てきます。これを解決するための手段として用意されたのが「チャイルドコード(下位分類コード)」という考え方です。

これは、他の機関が発行・管理するコードを国連LOCODEのチャイルドコードとして取り扱うというものです。現時点では「BICコンテナ施設コード(BIC Container Facility Code)」、「IMO港湾施設番号(IMO Port Facility number)」、「IATA空港コード(IATA Code)」などがチャイルドコードとして取り扱われています。国連LOCODEとチャイルドコードを組み合わせることで、従来のように施設を特定することを可能にする考え方と言えます。

変遷ポイント(3)コードに使われる文字列

第2版の時点では、コードはアルファベットのみで構成される1と記載されていました。しかしながら、コードの登録数が増えてきたことでアルファベットの組み合わせがなくなってしまう懸念から、数字を使うことへの需要が出てきました。そこで、第3版からは数字(2~9)の使用が可能となりました。ただし自由に使えるわけではなく、ある国においてアルファベットの組み合わせが使い尽くされた場合のみに数字の使用が許可されることになっています。また、第4版では表記上の類似による混同を防ぐため、0と1は使用が禁止されることが追加されました。

日本の場合は、現時点(2026年6月)においてもアルファベットの組み合わせは枯渇していないため、リクエストを行う場合に数字を使うことはできません(注釈:国連LOCODEリクエストの方法はその3で詳しく説明予定)。

変遷ポイント(4)LOCODEに含まれる情報

第2版の時点では、①LOCODE、②地名、③行政区分、④ファンクションコード、⑤地理的識別子、⑥ステータス、⑦日付の7つの情報が含まれていました。5つ目の地理的識別子は後述の地理的座標ではなく、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)が使用する「海域を表す1文字のコード」でしたが、現在LOCODEでは使われていないため詳細は割愛します。

第3版のマニュアルでは①変更インジケータ、②発音記号なしの地名、③IATAコードが追加され、先の地理的識別子は削除されました。

第4版のマニュアルでは①地理的座標と②備考欄が追加され、IATAコードはチャイルドコードの導入により削除されました。注意を要する点として、それまで地理的座標は任意だったものが、このバージョンから必須となりました。最後に、第3版で追加された発音記号なしの地名は「国際貿易にて使用される地名」に変更され、「日付」も更新日まで含む情報に詳細化されています。

変遷ポイント(5)ファンクションコード

ファンクションコードは、国連LOCODEが付与された地域にどのような施設が存在し、そこが国際貿易においてどのような役を担っているかを示す機能属性を示すものです。つまり、国連LOCODEが施設を表すコードであれば本来不要と思われる情報です。しかしながら、施設を表すコードから地名を表すコードに代わっていく中で、地域に含まれる施設を示す情報として設定されたものと考えることができます。興味深いのは、このファンクションコード自体は第2版の時点から存在しているという点で、このころから国連LOCODEの定義は緩やかな変遷を始めていた、と考えることができるのかも知れません。

なお、このファンクションコードについての詳細は次回、CEFACT標準ことはじめ(5)において詳しく紹介する予定です。

変遷ポイント(6)リクエスト方法

最後に、国連LOCODEを申請する方法も大幅に変わりました。第2版の時点では、フロッピーディスクにリクエスト内容を記載したファイルデータを入れ、スイス・ジュネーブの国連本部に郵送する方法が取られていました。第3版では電子メールの記載が現れ、電子的な送信が可能になったものと思われます。直近では国連ECEのウェブサイトに「データメンテナンスリクエスト(DMR)システム」が設置され、オンラインでリクエストを提出することができるようになりました。

なお、最新のリクエスト方法についての詳細は次々回、CEFACT標準ことはじめ(6)において詳しく紹介する予定です。(つづく)

【脚注】

  1. 注:アルファベットは大文字のみが使用され、小文字は使用されません