2026.09.30 おすすめ記事

通関ビジネス実務検定とは? 創設者に聴く背景と目的&公式ガイド紹介

この記事では、2021年12月から実施されている通関ビジネス実務検定を取り上げます。この検定の背景や意義について、創設者である片山立志氏(日本貿易実務検定協会理事長/株式会社マウンハーフジャパン代表)への取材を行いました。また、この検定で得られる知識をまとめた書籍として、『公式ガイド 日本貿易実務検定協会編 通関ビジネス実務検定 要点整理&練習問題』も紹介します。

なぜtradigi.jpで通関ビジネス実務検定の紹介をするのか?

tradigi.jpを運営するJASTPROが実施した通関DX調査の記事(速報・詳説1・詳説2)でも紹介しているとおり、輸出入許可を得るための「通関」は、モノを国内外に動かす貿易に必要な手続の「中核」に位置付けられるプロセスです。そのため、貿易手続のデジタル変革を進める場を提供することを目指すtradigi.jpでは、これを非常に重視しています。

さて、通関と言えばまず国家資格である通関士試験が思い浮かびます。合格者に一定の法的地位が認められる試験という位置づけであるためか、難問も多く、また通関業者に所属しない限り生かせない資格でもあるため(※通関士は他の士業と異なり自身のみで業として通関を行うことはできず、通関業者に所属した上で、その通関業者を通じて財務大臣(税関長)の確認を受けることで通関士の業務を行うことができる)、貿易手続に関する知識を得るためだけに受験するにはやや重めの試験と言えます。

では、この「通関ビジネス実務検定」というのは、どういった位置づけの試験なのでしょうか?

tradigi.jpで検定内容を調べてみたところ、求められる知識は通関士試験ほど法律知識が要求されない代わりに、通関を中核とした貿易手続・国際物流を広くカバーする知識体系としてまとめられているという印象を持ちました。

tradigi.jpでこの検定を紹介する理由は、通関DXを考えるうえで、制度改正やシステム化の動向だけでなく、通関という実務そのものへの基礎理解が欠かせないからです。tradigi.jpの読者には、商社、物流事業者、システム関係者、研究者など通関に直接・間接に関わるさまざまな立場の方が含まれます。そうした方々にとって、通関ビジネス実務検定は、通関士試験ほど専門資格に寄らず、通関を取り巻くビジネス全体を学ぶ入口になり得るものだと考えています。

そこで、検定の創設に至った経緯や想いについて、検定を主催する日本貿易検定協会理事長である片山立志氏への取材を行いました。

検定創設の背景と想い

通関士試験について、片山氏は「通関士試験の合格率は全体で10%程度の難関試験の部類ですが、(独学ではなく)講座受講などを通じて40%程度まで合格率を引き上げることが可能である」といいます。

「長年通関士試験合格に向けた指導を行ってきた経験から言うと、通関士試験の内容はかなり難しいため、頑張って合格できれば良いですが、テキストを見ただけで嫌になってしまう方もいます。そうした方たちへの入門編として、まずは通関という仕事の全体像を押さえてもらうための知識体系を用意したかった」

片山氏が続けます。

「通関士の試験は、試験の準備時間に対して覚える量が多いため、面白おかしく教える余裕もなく、覚えるばかりで嫌になる人が出てくるのも良くわかるのです。そこで、いきなりすべてを覚えるのではなく『全体的な流れを最初におさえる』ことを目標に、過去の経験をもとに必要な部分を押さえるという観点で新しい検定を作りました」

通関ビジネス実務検定の対象者は?

これから通関士を目指す方にとっては「通関が関係するビジネス全体の流れ」を知ることができるため、その後の通関士合格にむけた学習がより捗るという効果が期待できそうです。

では、通関士合格を目指す人だけがこの検定を受けるべきなのでしょうか?

この問いに対しても、片山氏はこのように説明してくださいました。

「この検定は、通関士を目指す人のためだけに創設したものではありません。この検定を通じて得られる基礎的な知識は、例えば一般企業で通関に関わる営業職の方にとっても役立つと考えています。つまり、通関士として輸出入通関の専門的な仕事をするわけではないが、そういった専門家と一緒に仕事をしたり、仕事を発注したりする方にとっても、自らを守る力としての知識を得る機会として活用してほしいと思っているのです」

自らを守る力としての知識・・・例えば「通関はフォワーダーや通関業者にお任せしている」というケースであっても、通関にまつわるさまざまな背景や法律に関する知識を知っておくことで通関トラブルの発生を抑える、あるいは発生した場合にその状況をきちんと理解できれば、ネガティブな影響を軽減することに役立つ・・・そういった効果が期待できるということです。

片山氏からは通関士試験の現状について「通関士の受験者は、かつて年間1万人ほどだったのが、ここ数年は6000人ぐらいで横ばいになっています。かつて大学生も受験していましたが、最近では減ってきているようです」という分析もありました。

そして、最後に大変印象的だったのは次の一言でした。

「通関の面白さが伝わっていないのかもしれません」

今回の取材で一貫して片山氏から伝わってきたのは「楽しみながら学んでほしい」という想いでした。通関士試験だけを見てしまうと「通関」と「面白さ」は正直なところリンクしません。今回紹介した通関ビジネス実務検定は、そこをつなげる意義を持って生み出された検定であると言えるでしょう。

「複雑な貿易・通関の手続をどこからどうやって理解していけばいいのか」

学生を含め新しくこの業界に入ってくる方や、貿易・通関に関わるビジネスを始めたい考える方などが知っておくべき基礎知識を広範囲にカバーし、好奇心もくすぐりながら系統立てて整理された状態で学べる。そんな検定であることが良くわかる取材でした。

検定公式ガイドブックは、tradigi.jpを読み解くのにも役立ちます

最後に、この検定に興味を持たれた方への情報源として、公式ガイドである「日本貿易実務検定協会編 通関ビジネス実務検定 要点整理&練習問題」も紹介しておきたいと思います。

tradigi.jp読者の皆様におかれましても、本書で網羅されている内容を一通り読んでいただけると、tradigi.jpに掲載されているやや専門的・マニアックな記事の背景を理解しやすくなり、いっそう楽しんでいただけるのではないかと思っています。

この記事で本書を取り上げるのも、受験対策書として推薦すること自体が目的ではなく、「通関業務」ではどのような実務が行われていて、どのような知識がその周辺に広がっているのかを知る手がかりになると考えたためです。

なお、通関ビジネス実務検定は年2回、5月と12月に実施されています。実はこの記事を書いている筆者自身、貿易にも通関にも縁遠い他業界からの転職でJASTPROの職員になったため、この検定を通して通関ビジネス実務への理解を深めようと思っています。

まずは次の検定である12月に向けて本書を活用し、合格を目指してみようと思います。ということで、次回記事「通関ビジネス実務検定・合格体験記編(仮題)」にご期待ください(つづく?)。